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島根県のハードコアパンクバンド、ヤンキー少女、改めSOFT、改めストーナーロックバンドPOSTOVOIのボーカルjunkieの公式ブログ!!!
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黒沢清の「降霊」



関西テレビが製作したTVMですよね?出雲のGEOに置いてあったので、普通に怖いホラー映画を期待して借りてみたんですが、普通に壮絶に怖い極めて高性能なホラー映画でした。 こんなに洗練されたホラー映画なのにハリウッド・リメイクされていないのは、実は本作自体がマーク・マクシェーンの小説「雨の午後の降霊術」(Seance on a Wet Afternoon)の再映画化だから(一回目の映画化は1964年、ブライアン・フォーブス監督、キム・スタンレーとリチャード・アッテンボロー主演の「雨の午後の降霊祭」)。


フジテレビの深夜番組で以前、そのテの「見える人」に「『見える』ときをいちばんリアルに再現したホラー映画」を訊いたところ文句なしの第1位に輝いたことであまりに有名な映画ですね。ホテルの食堂で役所広司が風吹ジュンの肩に『見て』しまうシーンが、現役の「見える人」たちにとっては極めてリアルに作られていたそうです。ほんとうにそういう風に見えるんですって。
 
個人的にいちばん怖かったのが、ファミレスの大杉漣のシーン。無造作にさりげなく、しかし忽然と・・・。実際、『見える』ときってそういうものかも知んない、と思わせてくれる意味でまさに極めてリアル。大杉漣が演じる腹立たしいまでの傲岸不遜なクソサラリーマンの演技もリアルで、そこに注意を惹きつけられた隙にそれが『見える』、タイミングの妙。完璧。

過日のジャパニーズ・ホラー粗製濫造の狂騒の影で、リアリズムを追求したシネマヴェリテが如きホラー演出はとんと忘れられてしまったように感じるけど、ジャパニーズ・ホラーの武器ってやっぱりそこだと思うんだよね。それでなくてもここまでリアリスティックに、かつストイックに作られたホラー映画も珍しい。歴史的傑作「恐怖の足跡」(Carnival of Souls)に伍するかも、と言うと褒め過ぎだろうか?でも、それくらい良いですよ。
POVの手ブレカメラが映画界の新たなドグマとして定着し、猫も杓子もインディペンデントもメジャーの大作映画も等しく手ブレでブレブレの21世紀映画界にあって、ジャパニーズ・ホラーが、というよりホラー映画そのものがどこへ向かうべきなのかはぜんぜんわかんないけど、POV以前の固定の画作りにおけるホラー演出の、まさにひとつの里程標であり、立ち返るべき原点。いまの映画がわからなくなったら、とりあえず観直してみよう!





・・・とは言うものの、やはりいちばん忘れてはならないのはこの映画がサブテーマとして「小市民の悲劇」を内包しているということだと思う。小市民の平凡な幸せが、ひとつの奇妙な偶然を発端にして全部崩れていく、という、言わばサム・ライミの「シンプル・プラン」ですね。
映画の前半では、役所広司と風吹ジュンの、慎ましくも幸せな夫婦生活が丹念に描かれていく。お金はそんなにないけれど、二人で生きていくには充分だし、ケンカもしないし、たまの休日になればレストランに行っておいしいものを食べてアレコレと未来についての話をしたりする。ほんとうに幸せそうだ。何も不足がないように思える。でも、ある事件がきっかけでその平凡な幸せに影が差す。

「ねぇ、わたし、このまま終わっちゃうの?」
「・・・・・・・」
何かきっと良いことがあると思ってたから、二人で生きてきたのに!このままここで終わっちゃうんだ


風吹ジュンのこのセリフはともすれば幽霊よりも怖い。自分の人生が無価値だったとわかる瞬間。そんなこと言われたって!と観ているときは思うけど、でも責められない。たぶん、これは誰の人生にもいつかは訪れる万人に平等なホラーだから。
 
遅かれ早かれ、きっと来る。自分の人生の無意味さを知る、或いは突きつけられる瞬間が。そのときあなたは何を思うのか? そして、それに耐えられるのか?


 人生はいちばんおそろしいホラー映画だ。どんなゾンビよりも、どんな幽霊よりも凶悪で無慈悲な出来事に溢れた究極のホラー映画。 ただ、その映画を撮っているのは誰なのか?金を出してるのは神様かもしれないが、現場で働いているのは少なくともおれ自身だ。根本敬さんが言うように、脚本の決定稿は常におれの足元に転がってるんだ。

地獄のような世界を生きつづけることがハッピーなのか、死を選ぶことがハッピーなのか、それは人それぞれだけど、いずれにしろ自分の納得がいく形でエンドマークを迎えなくてはならないよね。
あなたはどう?生きることがハッピーだと勘違いして死にたい?どうでもいいことにチマチマと幸せを感じられるような合成ドラッグでクスリ漬けになって幸せな笑顔で安らかに死にたい?

まあ、それが割り切れないうちはまだ死ぬなってことだよね。おれはまだ二周目にも入ってないし、自機も残ってるみたいだから、まだしばらくはロックのCDを聴いてジャンクフードを食べてゾンビ映画観て泣いたり笑ったりしてるよ。
「降霊」でここまで人生を考えるとは思わなかった(笑)


ところで、役所広司と風吹ジュンの夫婦の人生はこれからどうなっていったんだと思う?
おれは、実はあれはハッピーエンドだったんじゃないかって思うんだ。
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無題
はじめまして。ちょっと感動というか、ぞっとしたのでコメントさせて頂きます。『降霊』で検索してやってきました。なぜ、検索したかというともう10年程前にこの映画をレンタルで見ましたが、(おばけ)の映像的描写があまりに(私にとって)リアルで印象深く、ふとそれを思い出して、きっと監督は霊感のある人ではないか?その情報はネットにないか?と思い、調べようとしたのでした。
私もあまり見えることはないけれど変なものを感じることが多々あるのでこの映画の描写が気になっていました。
ですので、こちらに「『見える』ときをいちばんリアルに再現したホラー映画」と書かれているのを見たときには、ああ、他の感じる人もあんな風に見えているのか!と変な感動を覚えてしまいました。映画のあの場面のように、ぼやけてるけどどんな服を着た男(あるいは女)って感じでみえるんですよねえ。
NONAME 2011/07/25(Mon)00:33:48 編集
無題
ぼくは幽霊やUFOにすごい興味があって、そういったものが存在すると本気で信じていますし、そういう文献を読んだり映画を観たりしているのですが、実際にそういった怪異現象に遭遇したことがないので、この映画の幽霊の描き方が本物に近いのかどうかはわからないです。たまに背後に気配を感じて振り返ったりしますが、まったく見たことがないです。でも、「どーん!」と出てくるよりも、ぽやーっと佇んでいる方がリアルというか、それっぽいかもしれないですね。実際に見える人の話を聞かせていただくと、やっぱりそういう感じだそうです。そういう意味で幽霊を見たことがない人にも「それっぽい」と思わせる黒沢清監督の手腕はやはり大したものです。
ジャンキー 2011/08/14(Sun)00:43:55 編集
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