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島根県のハードコアパンクバンド、ヤンキー少女、改めSOFT、改めストーナーロックバンドPOSTOVOIのボーカルjunkieの公式ブログ!!!
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inglourious_basterds.JPG


Inglourious Basterds Teaser

Eli Roth | MySpace動画



新京極でクェンティン・タランティーノの「イングロリアス・バスターズ」を鑑賞。


中学生の頃に「レザボア・ドッグズ」を観たとき、その余りの中身のなさに驚いた。冒頭から半端なヤクザたちの下ネタとご当地ネタのくだらない会話が淡々と、冗長に、ダラダラダラダラと延々とつづく。ほんとうに延々とつづく。そのあと適当に銃撃戦があって血が出て逃げ込んであーでもないこーでもないバーン!それで終わり。終わりい?!ほんとうにそれで終わりなのだから仕方ない。でも、これがアメリカではカルト化して名を売ったタランティーノはインディペンデントの若い映画作家の青田買いに執心していたディズニー傘下のディメンジョン(Dimension)に見出されメジャーへと進出していく。進出していくが、未だにあの映画のどこが良かったのかわからない。思い出すのはハーヴェイ・カイテルの二丁拳銃だけだ。
アカデミー賞のオリジナル脚本賞を受賞した代表作「パルプ・フィクション」の脚本は、確かに洗練されていた。巧みに伸縮しフラッシュ・フォワードする断章形式のフィルム・ノワールは新時代の映画の幕開きを予感させるものだった。でも、あれはタランティーノの完全なオリジナル脚本ではない。「パルプ・フィクション」のプロットはロジャー・エイヴァリーが書いたシノプシスを拡張して作られたものであり、伏線が巧みに張り巡らされた見事なストーリーラインがいったいタランティーノとエイヴァリーのどちらの発想によるものなのかは今日に至って尚つまびらかにはされていないが、わたし個人の意見を言えば、ああいう風にストーリーを構成したのはロジャー・エイヴァリーの功績だと思う。なぜなら、それ以外のタランティーノの映画は全部どうでもいい会話がダラダラダラダラとつづくだけの映画でしかないからだ。タランティーノには直裁に言って、字義通りのストーリーテリングの才能はないと思う。でも、それが何だと言うのか?
わたしにとってタランティーノの映画は退屈そのものでしかないし、「あのダラダラ会話がおもしろい」とかわかったような口を利くファンには閉口してしまうしかないが、「死ぬほどどうでもいい話に盛大に金をかけて立派な映画にする」というスキルにおいて彼の右に出る者はいない。だからタランティーノは偉大なのだ。
「エンジンを積んでない豪華なキャデラック」とは、自らの原作を大幅に改変したキューブリックの「シャイニング」を観たときのスティーヴン・キングの有名な皮肉だが、これと同じことがタランティーノの映画にも言えると思う。スティーヴン・キングはキューブリックの唯物論的でソリッドなスタンスに対して苦言を呈したわけだが、タランティーノの作るデコトラが如きキャデラックは「オタクに金を持たせたらどうなるか」ということのひとつの里程標としてこそ意味がある。もちろん、オタクは自分のことしか考えられない天動説論者であるからこそオタクなのであり、彼らに大金を持たせたら自分の好きなことにしか使わないことは明白である。それを純粋ととるか愚直ととるか、金をドブに捨ててるととるかは、人それぞれですが・・・。




閑話休題。
まず、本作「イングロリアス・バスターズ」の原題は"Inglourious Basterds"であり、意図的にミススペルされている。多くの日本語のレファレンスでは本作は1978年のエンツォ・カステラリのイタリア映画「地獄のバスターズ」(Inglorious Bastards)のリメイクであるとされているし、実際に「地獄のバスターズ」に出演したボー・スヴェンソンも「イングロリアス・バスターズ」に登場している意味でその関連性は疑うべくがない。しかしタランティーノはわざわざタイトルをブロークン・イングリッシュにしてまで差別化をはかろうとした。タランティーノは「明確なリメイクではなく、マカロニ戦争映画というサブジャンル全体へのオマージュだ」と語っているらしい(Wikipediaを参照。一次情報の典拠なし)。まあ、タランティーノの映画は今も昔も「先行作品の愛ある剽窃」ばかりなので本作がリメイクであろうがなかろうがあまり印象は変わらないと思うが。

話は、まあ・・・「内容はないよー!!!」を地で行く相変わらずのタランティーノ映画で、70億円という盛大なバジェットと153分という決して短くないランタイムをかけて世に問う価値のある映画だとは間違っても思わないが、それを現実のものとしてしまったタランティーノのゴリ押しの力技というダイナミズムに是が非でも感動してしまうのである。
ストーリーそのものはどうでもいいくらいどうでもいいし、一応スパイ映画の文法で話が進んでいくのでそれなりに緊張感があるとは言え伏線が存在しないも同然なのでやはりストーリーに関しては深く考えないほうがいい。ただし、ダラダラ会話は自重気味であり、これまでのタランティーノ映画と同様にバストアップの会話劇が大半を占める中でそのセリフのひとつひとつは意外と味わい深い。タランティーノのダラダラ会話の問題は、「そこで語られる対象についての予備知識がないとまったく意味がわからない」という点に尽きると思うが、今回は第二次世界大戦末期のナチス占領下のフランスが舞台なので細かいウンチクやジャーゴンの応酬で頭がスライムにならずに済む。

さて、特筆すべきはオーストリア人俳優クリストフ・ウォルツ(Christoph Waltz)の素晴らしい演技である。「ユダヤ・ハンター(Jew Hunter)」の異名をとる冷酷非道なSS士官ハンス・ランダの配役にタランティーノは当初レオナルド・ディカプリオを予定していたというが、そうしなくて正解だったと思う。クリストフ・ウォルツは本作の演技で見事カンヌ映画祭の最優秀男優賞を受賞したが、それも納得の名演技。ウォルツ自身がマルチリンガルであったことが大きなアドヴァンテージとなったことは確かだが、「あーこんなオタク映画で何やってるんだおれー」という諸行無常の響きも、「どうせオタク映画だしねー」と部活感覚でこなす脱力感もなく、プロフェッショナルに演じ切ったことに俳優としての矜持を感じる。クリストフ・ウォルツはハンス・ランダによって戦争映画におけるヒールのロールプレイングのひとつのステロタイプを確立したのではないだろうか?


「イングロリアス・バスターズ」は公開されるや最初の週末で30億円を稼ぎ出し、ボックスオフィスではピーター・ジャクソン製作の宇宙人映画「District 9」を抜いて初登場首位を獲得、その後早くも「ファイナル・デスティネーション4」に座を明け渡すものの最初の10日間だけで70億円を稼いでバジェット分を既に回収してしまった。これは歴代のタランティーノ映画の中で最高の成績である。11月現在までで全世界興行収入は300億円を突破する見込みで、「イングロリアス・バスターズ」は興行成績という意味では最高のタランティーノ映画ということになる。

本作は明らかなアンタイ・ナチス映画である。アンタイ・ナチスをひとつの要素として盛り込んでいる、という安易なものではなく、アンタイ・ナチスそのものを標榜しているという意味で究極のアンタイ・ナチス映画となっている。これはスピルバーグでも出来なかったことかもしれない。
いままでの戦争映画でアンタイ・ナチスの構造が踏襲されつづけてきたことの最大の原因は、単純に第二次世界大戦が枢軸国側の敗戦に終わったからだが、その対立が東西冷戦構造に置換されたことでナチスによって虐げられてきた人々の艱難辛苦の歴史は華やかな戦勝体験の影で不必要に美化されたり誇張されたりした。戦勝プロパガンダにとって被害者たちは常に善良たらねばならない。
しかし、「イングロリアス・バスターズ」の明確なテーマは「復讐」である。イングロリアス・バスターズはユダヤ系アメリカ人、もしくは戦争によってアメリカに亡命せざるを得なかったユダヤ人たちによって編成された特命部隊であり、目的は同胞を殺しつづけるナチどもを一人残らず殲滅しその頭の皮(skulp)を剥ぐこと!イーライ・ロス演じるドニー・ドノヴィッツはその中でもベースボール・バット・スウィンギング・バスタード(Baseball Bat Swinging Basterd)。バットでナチどもの頭をボコボコに殴りまくって殺す。


ユダヤの血は常に団結によって紡がれてきた。どこへ行っても差別されてきたからだ。だから団結してコミュニティを作り、商売をがんばって自立するしかなかった。我が国における在日コリアンよりも事情が複雑である。ユダヤ人には帰るべき祖国すらなかったのだから。しかし金を稼ぎすぎればそれはそれで疎まれるようになった。ナチスは議会制民主主義国家であったドイツで如何にして実権を掌握し得たか?叩き上げで大成したユダヤ人や高利貸しのユダヤ人を批判して民衆の不満をそこへ収斂させたからだ。かくして水晶の夜が訪れた。
イスラエル軍のパレスチナ人民虐殺についてアメリカが何も言及しないことは、アメリカの政財界の大半がユダヤ系の財閥によって握られ、石油メジャーや軍産複合体を牛耳る一部のユダヤ人たちがロビイストとして暗躍しているからだと言われている。これに対しては内外から批判が多い。イスラエル軍の蛮行は誰がどう見ても「やりすぎ」だからだ。ユダヤ人たちがホロコーストで苦しんできたことは事実だが、かえってパレスチナの問題によってそのかつてのジェノサイドの暗黒史の意味が薄らいでいることは、ユダヤ陣営にとっても好ましいことだとは思えない。

「イングロリアス・バスターズ」が北米市場と国際市場の両方で大ヒットを記録した要因は、一にも二にもユダヤ人を集客したことであることは明らかだが、本作はマカロニ戦争映画(クリシェを前面に押し出したわかりやすい勧善懲悪のレトリックを平然と繰り返してきた)へ捧げられたオマージュであり、それが故にやはりわかりやすいアンタイ・ナチス映画となっている。ブラッド・ピット演じるアルド・レイン中尉は「ナチどもに人間性などない」と吐き捨てる。実際に出てくるナチは全員悪魔か変態のような鬼畜ばかりである。狙撃兵として戦果を挙げ英雄となったダニエル・ブリュール演じるフレデリック・ゾラーも結局は自分勝手なストーカーでしかない。実際がどうだったかは知らない。中にはマトモなナチもいたかもしれない。でも勝手に自分たちの土地を占領して仲間をいっぱい殺したナチはフランス人やユダヤ人にとってみれば悪魔でしかない。
イーライ・ロスとオマー・ドゥームがシュマイザーを乱射するラストは感動的である。彼らの目は大きく見開かれ、そして涙で覆われている。同胞を殺し自らは安寧をむさぼり私腹を肥やすクソども!そいつらを一人残らず蜂の巣にする。ヒトラーもゲッベルスもナチに身を売った売女も全員!総ては復讐のために・・・。


本作が優れているのは、この映画があくまでアンタイ・ナチス映画であってユダヤ礼賛映画ではないという点である。主題は一貫してナチどもを殺すこと。ユダヤ人が同胞の仇を討つために自ら銃をとって引導を渡す。面白半分でやっているのではなく、真剣にナチの殲滅に人生を捧げている。だからこそイーライ・ロスとオマー・ドゥームは凄まじい形相でナチの豚どもを撃ち殺すのである。
ここには二通りの解釈の余地が残されている。ひとつに「ナチどもは殺されて当然だ」、というものと、そしてもうひとつに、「結局はこれも暴力だ」、というものだ。この映画はどちらの解釈も肯定しているように思える。そして、それが素晴らしいのである。ユダヤ人に感情移入させる部分を顕揚しながら、あまりにも単純に映画が終息していくことで観客に本作が明確なハリウッド・システムの文法で書かれていることをわかりやすく示す。イーライ・ロスのバット殺人はともすれば悦楽的であり、そしてそもそもハリウッド・システムとはバット殺人を無条件に肯定するコロニアリズムにも似た優生思想を抱えたものであった。自由と民主主義を喧伝するためにハリウッドは民族主義を内包せざるを得なかったのだ。さて、アメリカの文化を彩ってきたのは、いつの時代もユダヤ人たちではなかったか?
「イングロリアス・バスターズ」はマカロニ戦争映画へのオマージュであり、そしてハリウッド映画そのものへの逆説的なアンチテーゼである。死ぬほどどうでもいい話を盛大に金をかけて映画にしたものであることに変わりはないが、それによってカリカチュアされた旧来のハリウッドのレトリックがどんなものであるかを明示し、映画産業という名の巨大なアメリカニズムのレゾンデートルを暴き出す。言わば「ファニー・ゲーム」のバリエーションである。そしてこれは「ファニー・ゲーム」よりもはるかに有用である。ブラッド・ピットがボウイー・ナイフでハーケンクロイツをナチどもの額に刻み付ける場面で、隣にいた女性客が大きくのけぞり目をそむけていたのが印象的だった。ブラッド・ピットは政治的には自由と民主主義の啓蒙者であるべきはずである。しかし、タランティーノはそうはしなかった。イーライ・ロスとオマー・ドゥームの涙はブラッド・ピットの「最高傑作」と釣り合うものではない。復讐は暴力であってそれ以上でも以下でもないからだ。そして、それが世界の真実なのだ。
「これがおれの最高傑作だ」。
わたしもその通りだと思う。


最後に、「イングロリアス・バスターズ」の日本配給はあの東宝東和である。キュービック・ショックバンボロジョギリ・ショック「死んだらハワイの墓地に埋葬します!」スパック・ロマンのあの東宝東和である。今回は「面白さタランかったら、全額返金しバスターズ!!!」。商魂たくましい興行師根性がすがすがしく、大変よろしい。
東宝東和の名言で本稿をしめくくろうと思う。
「うちはフォックスの地方配給もやっているから、『スター・ウォーズ』も広い意味でうちの映画なんです」
「・・・・・・」
(映画秘宝編集部・編 『底抜け超大作』88頁)



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「イングロリアス・バスターズ」★★★★オススメ ブラッド・ピット、ダイアン・クルーガー、ティル・シュヴァイガー、ダニエル・ブリュール出演 クエンティン・タランティーノ監督、152分 、公開日:2009年11月20日、2009年、アメリカ (原題:INGLOURIOUS BASTERDS)                     →  ★映画のブログ★                      どんなブログが人気なのか知りたい← 「アルド中尉(ブラッド・ピット)率いる ...
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島根県のハードコアバンド、ヤンキー少女改め、SOFT、改め爽やかJ-POPデスメタルバンドPOSTOVOIのギター・ボーカルです。

バンドとは別にソロプロジェクトとして、チップチューン・デス・メタルを追求するF.O.D(Fuck or Die)をはじめました。MySpace

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