冗談だと思われるかもしれないが、わたしは自分で自分が本気でギタリストだと思っている。わたしにはテクニックなんてないしスケールもろくに知らないし理論も知らない。足元には歪みしかないし唯一テクニックがあるとすれば「高音と低音のそれぞれのフィードバックを使い分けられる」程度だ。ギターマガジンとかを読んでいると眩暈がしそうになる。ほんとうにこのひとたちは上手いんだな、自分は死んでも無理だな、と思う。たぶんおれは死んでもロバート・フリップのようにはなれない。うらやましいから、テクニック一辺倒のひとをリスペクトする気持ちはある。でも、そういうひとたちになりたいとは全く思わない。ギターの弾き方というのを知らないし、どういう音が良いとか、どういうギターが上手いかとか、それらも実はほんとうのところはまるでわかってない。
でもギターという楽器は好きだ。鉄と鉄が振動しあって電気がそれを増幅して残虐な音を出してくれる。だからエレクトリック・ギターが好きだ。電気が通ってないギターは、実はあんまり好きじゃない。素敵なコード進行とかフレーズとかには全く興味がない。音楽の内容にはまるで興味がない。それがどう変形して歪んでいるか、増幅されているか、興味があるのはそれだけ。
嘘を言うのはやめよう。ひとを惑わすのはやめよう。ギタリストごときがひとの哀しみをどうにかしてくれるのだろうか。そんな幻想を見るのはやめよう。生まれたくもないのに生まれてきた無数の音が電気でボコボコにされて増幅されて、わたしたちはそれでいったい何をしたいのだろうか。わたしはギターとセックスがしたい。ギターをレイプしたい。
わたしが音楽を通して伝えたいこと、それは、ギターを身篭らせて中絶させたり畸形児が産まれたり、そういったありのまま。そこから目をそらすのは、もうやめよう。もう、やめよう。
「Earth2 -Special Low Frequency Version-」を聴いていると、眠りに落ちるかそういうことを考えるかのどっちかだ。
いつかわれわれは、ギターとわれわれとの間に産まれた私生児の悲しみに謝ることができるのだろうか?
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