あけましておめでとうございます。唐突で申し訳ないけど、今後の自分の芸術との関わり方を根底から覆すような強烈な体験であったため、何をさしおいて今日観たライヴの話を。
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石コロケッタ
ファンクとアフロビートとフリージャズをゴッタ煮にしてモトローラ68000のCPUパワーの極限までスプライト片に細切れに加工したものをリバース・エンジニアリングした感じ・・・もっと言えばMZ-700のTinyXEVIOUSみたいな。それでいてデートコースペンタゴンロイヤルガーデンのようなベクトルには向かわないという。もっとわからんか。サックス/ボーカルの人が「タイのゲイ・バーのバック・バンドみたいな感じ」と言っていた。その形容は当意即妙。どこまでもバッド・テイスト原理主義に殉じる姿に拍手喝采。とりあえずとても良い。出雲に巣食うアヴァンギャルドのDNA継承者その1。
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安来のオジ
が本名でエントリー、リアル・フォーク・ブルースを限りなくオーセンティックに。良かった。
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NEWサザエ
本日のキュレーター・・・になるのかな?ファンクとジョルジオ・モロダーとシャッグズをゴッタ煮にしてモトローラ以下同文。もっと言えばTinyスペハリ。それでいて旧態依然とした80年代マンセーのリバイバリズムもしくはマニエリスムもしくはコピーキャットに堕さず、あくまで現在進行形のコンテンポラリー・ポップ・ミュージックへと結実させる力業。これに感動しなかったら嘘だ!!!メンバー全員初老、ひとりは還暦。ほとんどフィックスでそして30年目アニヴァーサリー。これはもはや奇跡的という以外の言葉が見つからない。かつてバンドマンであった総ての人はこのことの持つ意味をたちどころに理解できるはずだ。そうでなければいけない。もう最高。出雲に胚胎するアヴァンギャルドの血脈を継ぐものその2。
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DR.BREAKER
間違いなく世界に通用する音。安土桃山時代に仮にインダストリアル・ミュージックが奏でられていたなら確実にこういう音になっていたであろうという、時空をねじ曲げる完膚なきまでの轟音核融合。すごすぎ。去年も遠藤ミチロウが松江B1に来たときのオープニング・アクトでその凄さは体験済みだったが、今回はそれらのハードウェア資産を確実に継承したうえで更に上位互換を達成。もう最高。デイメアでもTZADIKでもIpecacでもマンズ・ルーイン(もうないが)でも何でもいいから、とにかくこの音を全世界に紹介して欲しい。現時点で世界最高のヘヴィ・ロックだと本気で思う。スティーヴ・アルビニもリック・ルーヴィンもSOMAもPITAもあとニューロシスもナパーム・デスも総ての轟音原理主義者がもう下を向いて黙るしかないほどに凄絶。狂おしいまでに残虐。そしてそれら全部が渾然一体となった末に垣間見るあっち側の世界。骨格を粉砕し脳を掌握し自意識を瓦解させるその総ての究極の更にその先。もうとにかく最高。
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山根麻衣
サプライズ・ゲスト。あの山根麻衣。菅野よう子w/シートベルツの超名曲「BLUE」はプレイしなかったが、そんなもの必要ないくらいの完璧なパフォーマンス。不遜ながら初めてそのご尊顔を拝謁したが、この宇宙のあまねく生命へ全方位で向けられた力強いメッセージのその凄まじい強度にただただ圧倒される。これが!あの!もう言葉が出なかった。最高。
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クリトリックリス
真打。もう(ドクターブレイカーをあれだけ誉めそやしておいて何だが)人類がいままで作り得た総ての音楽の中で最高だと本気で思う。リズム・マシンの脱力ペコペコ打ち込みバック・トラックに全身全霊のスポークン・ワードと謎の暗黒舞踏がシンクロナイズし名状すべからざるスカム・ミュージックの桃源郷が雪崩れを打つようにオーディエンスを篭絡する。そこで語られるのは市井の人々の苦しみと悲しみとその間隙で刹那的に飛び散る人生の真実めいたナニモノかの漏電火花の儚い残像。泣ける。本気で泣ける。音楽の意義とか芸術の定義とか人生の意味とかそういうものとは百億光年の隔たりがあるこの日常、我々が泣いたり笑ったり嘆いたりわめいたりブチキレたりオナニーしたりキスしたりセックスしたり産まれたり死んだりするこの日常のグラウンド・ゼロのそのハード・コアで刻まれるクロック周波数の化石の最後の黒い燃えカスが風に乗って運ばれたときに不意に瞬く、生きていかねばならない者たちのちっぽけな覚悟。或いは絶望。或いは焦燥。そして或いは、生の肯定とその孤独の終り。橋本昌和(P. A. WORKS)の傑作TVアニメ『TARI TARI』のテーマは、「文化のあるところに人はあつまる」だという。文化に引き寄せられ、文化に突き動かされ、そこで人と人は出会うべくして出会い、そしてそこから新たな文化が生まれる。涙が出そうだ。それが人の生きる道だと思う。クリトリックリスの音楽はその定理を確かに証明していると思うし、そしてそれゆえにクリトリックリスの音楽は人類史上最高のシティ・ポップスだと心の底から思う。松江ALIVEで彼のライヴを観て以来、ずっとわだかまっていたものが今日再びまみえたことで、ひとつの線につながったような気がした。できるだけ多くの人に彼のライヴを観てほしい。そして、「桐島、バンドやめるってよ」を聴きながらともに笑い、涙しよう。人と人はつながる。そこに音楽があるかぎり。
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