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島根県のハードコアパンクバンド、ヤンキー少女、改めSOFT、改めストーナーロックバンドPOSTOVOIのボーカルjunkieの公式ブログ!!!
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黒澤明監督没後10年ということで、BS2で「野良犬」を観る。

この映画は巷で言われる「超一級のサスペンス」などではあり得ない。まったくあり得ない。そんなことを本気で言うやつは恐らくサスペンスというものを知らないのだと思う。少なくともわたしはこの映画をサスペンスの文脈から解釈することはできない。

この映画は紛れもない、圧倒的なまでの「ドラマ」なのである。あまりにもドラマで、壮絶なまでのドラマである。

わたしはトビー・フーパーの「悪魔のいけにえ」をたいへんリスペクトしているが、いわゆる映画好きでも「悪魔のいけにえ」を評価する向きとそうでない向きがある。変態肉屋に情状酌量の余地がまるでないことが大きな要因かと思われる。当然、映画は娯楽であるし作品であるし主張であるし、そういった要因が必ずしも必要ではないことはわかるし、わたしも必要だとはまったく思わない。そういうしたり顔の良識者に対するルサンチマンを結実させる手段としての芸術というのにわたし自身は強いリスペクトがあるし、わたしが芸術に求めるのはむしろそういう部分かもしれない。
しかし、公序良俗に反するものごとにあまりに無頓着であることに対する警戒心というのは、しごくまっとうな人間心理である。朝焼けに染まりながらチェーンソーの爆音を鳴らして倒錯するレザーフェイスに共感できない、という現象はむしろ正当な反応である。わたしは芸術にそういった「良識」のバイアスを介すこと自体には強い反撥があるが、それが何らかの良心に起因している、ということは認めたい。

そういった意味で「野良犬」は「悪魔のいけにえ」の対極にある作品である。

ストイックであるということはある意味ではいちばん理解しやすい身体性である。ストイックという言葉をどう解釈するかも問題だが、合理主義や正義主義というのは、ある意味ではとてもポップなアナロジーである。
しかし我々が生きる世界というのはそういったものとはまったく構造が違う。
一元的な身体性で希釈することができない。
何かに理由がないとするなら空しいし、何かに理由があるとしてそれを突き詰めても空しい。我々が生きるのはそういう世界である。そういう世界で、システム依存であるということは、ある意味では逃避である。

誰かを思いやる、誰かのために犠牲になる、そういう行為こそ、はるかに残酷で冷酷で暴虐で、空しいのである。

「悪魔のいけにえ」で描かれるのは人命とか個人の尊厳といった旧来的な倫理観の蹂躙というスペクタクルである。
反面、「野良犬」が徹底的に攻撃するのは誰かを思いやる、誰かのために犠牲になる、まったく自己本位でないまっとうな善人たちなのである。そういった善意の、壮絶なまでの冷酷さを暴き出す。
人と関わる、この行為それだけで人を傷つけてしまう。その「業」が執拗に付きまとう。自分はやさしいつもりでも、触れた他人は傷ついてしまう。しかし、触れなければわれわれは善意を伝えることができない。

「だいたい、こんなものショーウィンドーに飾っとくから悪いのさ!あたしたちが欲しがるようなものを!わたしもこの服が欲しかったから、強盗でもなんでもしたかもしれないじゃないか!悪いやつは堂々と街歩いてうまいもん食って!悪いことしたやつが勝ちじゃないのさ!」
「でも君はどうだい?!だからと言って、君はそうしたのかい?!違うだろう!」
「社会は確かに悪い。でも、だからと言って総てを社会のせいにするのはもっと悪い」と言った刑事。
彼が正しかったか、俗世に負けた犯人が正しかったか、それはわたしには言えない。絶対に言えない。

ラスト、ついに追い詰められた犯人が、これでもかとばかりに咆哮する。世の中の総てを、生きとし生けるもの総てを呪い尽くす。


・・・しかし、彼がほんとうに呪ったのは、自分を追い詰めた「善意」ではなかったか。
自分を導き、自分を欺き、自分を見捨てた、「善意」を。



頭を打ちぬかれたような衝撃でしばらく何も言葉にならなかった。すごい映画だった。

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自己紹介:
島根県のハードコアバンド、ヤンキー少女改め、SOFT、改め爽やかJ-POPデスメタルバンドPOSTOVOIのギター・ボーカルです。

バンドとは別にソロプロジェクトとして、チップチューン・デス・メタルを追求するF.O.D(Fuck or Die)をはじめました。MySpace

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