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島根県のハードコアパンクバンド、ヤンキー少女、改めSOFT、改めストーナーロックバンドPOSTOVOIのボーカルjunkieの公式ブログ!!!
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~ありがとう、スティングレイ~

「ナイトシフト」というスティーヴン・キングの短編集がある。日本では扶桑社から「深夜勤務」と「トウモロコシ畑の子供たち」の二分冊で出版されたが、後者の「トウモロコシ畑の子供たち」は個人的にはいままで読んだ小説の中でベスト3に推挙せねば申し訳が立たぬほど耽溺し、熟読した本である。この短編集からはわたしが知る限りでも『芝刈り機の男』『霧』『トウモロコシ畑の子供たち』『312号室の女』がそれぞれ映画化されており(ただし『芝刈り機の男』の権利上の映画化である「バーチャル・ウォーズ」は、諸般の理由により好事家以外は観ないほうがいい)、おそらくスティーヴン・キング個人にとってもひとつの金字塔として屹立する畢生の名著であると言えるだろう。小学生の頃に『312号室の女』を読めたことは、わたしの人生にとって少なからぬ"大事故"であり、吉事であれ凶事であれ、あの凄まじい掌編を読んだことが結果的にいま自分が立っているこの場所につながっている。ほんとうに、心からそう思う。『312号室の女』を仮にあなたが読んだことがないなら、万難を排してでも一読することを強くおすすめする。

さて、日本では「ナイトシフト」二分冊の下巻にあたる作品集「トウモロコシ畑の子供たち」の表題作である中編『トウモロコシ畑の子供たち』は、誤解を恐れず言うなら十中八九、先行作品の剽窃、悪く言うとパクリである。少なくとも、「純真無垢なる子供たちが笑顔で大人を殺す」というプロットは確実に、1977年に公開されたあるスペイン映画から引用されたものである。それがナルシソ・イバニエス・セラドール監督の「ザ・チャイルド」(原題:Quien Puede Matar A Un Nino? 英語題:Who Can Kill a Child ?)だ。古今東西のB級映画に深い造詣とリスペクトと一家言を持つスティーヴン・キングが、この世界的なカルト映画を観ていなかったとは考えられない。
 

物語は単純だ。
白亜の民家が沿海部に立ち並ぶオーソドックスな南欧の観光地であるスペインの片田舎にイギリス人夫婦が訪れる。町は折りしも夏祭り。トムと身重のイブリンの2人はその喧騒を避けるために、沖合いに浮かぶアルマンソーラ島という人口200人余りの閑寂な小島に立ち寄ることにする。ボートをチャーターし島にたどり着いた2人だが、妙なことに気がついた・・・。静か過ぎるのだ。あまりにも静か過ぎる。それに、市街地には誰一人として人がいない。
否、「大人」がいないのだ。目に映るのは「子供」ばかり。軽食堂ではチキンがローストされたまま黒焦げになり、アイスクリーム売り場ではバニラファッジが炎天下に放置されドロドロに溶け、ホテルにさえ人がいない・・・。呼べども呼べども返事はなく、ときおり日向を闊歩する子供たちはニヤニヤと薄ら笑いを浮かべる。いったい、この島に何が起こったのか・・・?

ここまで読めば賢明な読者諸氏は事の次第をお気づきのことかと思う。
そう。
屈託のない笑みを浮かべた子供たちが手に手に武器を持って大人を殺す。満面の笑みを湛え、歓声を上げながら。
この映画には深いメッセージも教訓もない。深慮すべき哲学的なテーマ性もない。「常に大人たちの犠牲となり、虐げられてきた弱き者 = 子供たち」、という趨勢が逆転してしまったなら?子供たちが武器を持って襲ってきたら?しかし、そのとき、誰が子供を殺せるというのか?この映画にあるのはこの奇抜なプロットのみ、この一発ネタを112分間に渡って執拗に変質的に描き続ける、ただそれのみだ。だから、本作はB級映画と言ってしまえばそれまでの映画だし、そういう批評を否定する気もない。
しかし、わたしにはこれが傑作に思える。凄まじくおもしろい映画に見える。

映画の冒頭は意外な映像から始まる。スペインの片田舎からは遠く離れたアウシュビッツやアフリカやベトナムやインドや朝鮮半島の戦禍の惨状、とりわけ衰弱し死んでいく子供たちを淡々と捉えたフッテージが10分間に渡って延々と続く。「戦災がもたらす直接的な損害やインフラの壊滅によって最終的に被害をこうむるのはいつも子供たちだ。彼らには何も罪がないのに、いつも大人たちの理不尽の犠牲となり死んでいく。しかし、その構図が逆転してしまったなら、どうなるか?」本作の主旨を作品の導入部で説明する、ともすれば安直な構成だが、このフッテージが切り替わるたびにSEとして挿入されるのは不気味な、とても不気味な子供の鼻歌なのだ。痩せこけて手足が切断された子供たちの痛々しい写真が静止し、強調される度に流される不気味なわらべ歌。この効果は絶大であり、早くも観客を恐怖のドン底へと叩き落す。

ナルシソ・イバニエス・セラドール監督はこの「ザ・チャイルド」を除くとまともな劇映画はほとんどない。何故だろう?この映画を観る限り、「間」を重視した演出はけっして冗長になることなく、極上の恐怖を導出することに成功している。スピーディなカット割りも流麗なカメラワークも、ましてやCGもないのに、ただ「子供」を映しているだけなのに、なぜここまで「怖い」のだろう?暖簾の向こうに子供が立っている。たったこれだけのシーンが、なぜここまで背筋を凍らせるのだろう?スリッパを履いた男が階段をゆっくりと降りていく。たったこれだけのシーンが、なぜここまで呼吸を困難にさせるのだろう?過剰な特殊メイクも大仰な効果音も劇伴音楽も使わずともここまで怖がらせることができる、この事実にただただ驚嘆するしかない。

まともに評価された映画がこれ一本のみ、ということは本作がたまたま優れていただけだったのかもしれない。プロットが洗練されていたこと、俳優の演技が(子役を含め)トップレベルのものであることがセラドール監督の演出に寄与したばかりか、予想外な化学反応を起こして結果的に優れたものが出来上がったという、単なる僥倖に過ぎないのかもしれない。

しかし、この映画が優れた第一級のホラー映画であることに変わりはない。


もうひとつ傍注を付け加えるなら、本作はジョージ・A・ロメロ監督の「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」の明らかな影響下にある。忽然と群れをなして佇む子供たちの姿は、そのままジョージ・A・ロメロが「地球最後の男(The Last Man on Earth)」や「インクレディブル・クリーチャーズ」といった先行作品の要素にインスパイアされて導出した「モダン・ゾンビ」、因果性や個性を持たない記号としての恐怖の描き方そのものである。走らないし強力な武器も持たないのにいつの間にか手足をつかまれ捕食される、あの得も言われぬ恐怖感をもっとも忠実に継承したのは、実はこの「ザ・チャイルド」ではないのか?かたや絢爛豪華な特殊メイクを売りにするリビング・デッド、かたや普通の服を着てとりたてて変わりのない子供。視覚的に映えるのは前者であり、ジョージ・A・ロメロの革命的な発明品である「モダン・ゾンビ」はその特殊メイクという「装飾」を過剰にしていくエクストリームな進化を選択し、より身近な存在へと恐怖の範囲を狭めていく「ザ・チャイルド」のインディペンデントなやり方はこの1作だけでついえてしまった。それが悪いことだとは思わないが、「ザ・チャイルド」は1978年にジョージ・A・ロメロ自身がリメイクした「ゾンビ」よりも忠実に「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」の遺伝子を継承し、かつオリジナルを超える禍々しさを手に入れることに成功していると思う。「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」の正当な後継者として、ゾンビ映画ファンにとっても、この「ザ・チャイルド」は必見であると云えよう。




かように映画が名作であることは間違いないが、もっと素晴らしいのはこのDVDである。
30周年特別版と銘打たれたこの商品はその名に恥じないアルティメット版である。公開当時に月刊少年チャンピオン誌上に掲載されたコミカライズ作品を復刻採録した豪華60ページのブックレット、すでに廃盤となっていた初代日本盤マスターを自家でレストアしたあとにアメリカで発売されていたダーク・スカイ社の商品のマスターとを複合させる形で完全に修復され超美麗画像となった迫真のデジタル・リマスタリング、そしてTBSで放映された際の音源を一般篤志家から募っての日本語吹替収録と、まさに至れり尽くせり、メーカーの愛情と熱意と作品に対する執念が渾然一体となって結実した凄まじい「究極仕様」。素晴らしい。素晴らしすぎて言葉が出ない。コレクターズ・エディションやスペシャル・エディションという言葉は、これだけの努力をしてから初めて使うべきなのであって、申し訳程度に映像特典をつけて2枚組にすればユーザーが喜ぶと考えている大手メーカーは大馬鹿野郎である。特典を小出しにして「スペシャル・エディション」「プレミアム・エディション」「アルティメット・エディション」と出世魚のように名前と値段を変えて「悪魔のいけにえ」DVDを市場に氾濫させる某社なんて論外だ!

こんなにも素晴らしい、泣いて喜び庭かけまわる究極のDVDを作ったのはスティングレイ。心ある映画ファンならば、数年前に「ウィッカーマン」の日本盤DVDをはじめてリリースした会社としてご記憶の方も多いと思うが、値段分、もしくは値段以上の価値のDVDをユーザーに届けることのできる日本でほぼ唯一の超優良メーカーである。
「ザ・チャイルド」のDVDは5000円。「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」が500円で買え、「悪魔のいけにえ」が1500円で買えるいまとなっては決して安い買い物ではない。しかし、わたしはまったく後悔していない(するわけがない)。5000円でここまで幸せが買えるのであるから安いものである。映画に対する愛情。それがこんなにもダイレクトに伝わり、その熱意と労苦の痕跡が随所に認められる愛くるしい商品。ユーザー本位で考証しつくされた完璧な商品設計。こういう「モノ」こそ一生ものの買い物であり、そのようなしごく健全な商品を生産するメーカーにならみんなお金を払うことをいとわないだろう。これこそが真の意味での資本主義である。優良なサービスに対してはじめて対価を支払うべきなのであり、それがまったく機能していない現在のレバレッジ経済は単なるスターリニズム下の計画経済の変型である。スティングレイこそ、真の資本主義の体現者なのだ

「ウィッカーマン」のDVDが発売されたのは中学生の頃だったと思う。そのときは6000円もDVDのために工面する余裕など、あるはずもなかった。だから指をくわえているしかなかった。そのうち、程なくしてスティングレイの「ウィッカーマン」は廃盤となり、入手不可能になった。最近になってユニヴァーサルから廉価版が発売されたが、スティングレイ版の足元にも及ばないジャンク品らしい(字幕の翻訳が最悪らしい)。むしろ「改悪仕様」のユニヴァーサル版の登場によってスティングレイ版の価値がオークションで暴騰しているというから、皮肉である。心あるユーザーの間では「ウィッカーマン」は未だに「スティングレイのウィッカーマン」なのだ。さすがスティングレイ。やはりスティングレイ。

現在、スティングレイはウィリアム・ガードラー・コレクションと銘打って「グリズリー」と「アニマル大戦争」を発売している。すげえ。すげえスティングレイ。普通ならこんなゴミ映画、バイヤーが付かないし作ったとしても適当なスペックで申し訳程度にカタログの肥やしにして終わりだ。でもそこはスティングレイ、相変わらず「究極仕様」で出してしかも2タイトル同時購入者には「ウィリアム・ガードラー読本」というムックがプレゼントされる。狂っている。そもそもウィリアム・ガードラーの映画を観たがるやつなんて日本に100人もいないだろ。さすがスティングレイ。やはりスティングレイ。もはや日本のクライテリオンだ

その他のラインナップがビル・ハインツマン(「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」で最初に出てくるゾンビを演じた俳優)が監督・主演・脚本・製作・その他雑務をこなして作った、「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」に泥を塗る以外のなにものでもないゴミ「フレッシュ・イーター/ゾンビ群団」と、頭を抱えるラインナップであることが気がかりだが、商品購入という良識あるユーザー諸氏の献金によってスティングレイは変わらず邁進していくことだろう。近日発売として現在アナウンスされているのがジョージ・A・ロメロ監督が泣かず飛ばずの頃に撮ったB級ホラーの佳作「クレイジーズ」であり、「ウィッカーマン」、「ザ・チャイルド」に続くスティングレイ伝説を継承するDVDとなるに違いない。ウィリアム・ガードラー・コレクションや「フレッシュ・イーター」は買わんけど、「クレイジーズ」は買います。買わせて頂きます。

 

神々しいまでに禍々しく佇立する漆黒の箱に、燦然と踊る「ザ・チャイルド」の文字。良いなあ~。幸せだな~。
あなたも「ザ・チャイルド」のDVDを購入してみてはいかがだろうか?

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島根県のハードコアバンド、ヤンキー少女改め、SOFT、改め爽やかJ-POPデスメタルバンドPOSTOVOIのギター・ボーカルです。

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