忍者ブログ
島根県のハードコアパンクバンド、ヤンキー少女、改めSOFT、改めストーナーロックバンドPOSTOVOIのボーカルjunkieの公式ブログ!!!
[85]  [84]  [83]  [82]  [81]  [80]  [79]  [78]  [77]  [76]  [75
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



森達也の「放送禁止歌」を読了。

放送禁止歌とは何か。我々はその言葉をずいぶん前から知っている。もうずいぶん前からそれを畏怖しているようなふりをして、しかしもうずいぶん前からそれをどこかで待ち望んでもいる。
社会からかつて一度抹殺された歌謡曲・・・それは例えば頭脳警察の「1」と「2」にまつわるさまざまなフォークロアのように、我々に多くの恐怖と、そしてわずかに媚薬の芳香をもたらす。それは我々にこんな幻想を抱かせるのだ。
「我々が暮らすこの世界に両義性という名の病理が巣食っている背景には、何らかの首謀者がいる」。
本書に放送禁止歌を規制しつづける団体の弾圧から逃れながら放送禁止歌を歌わんとする表現者たちの不屈不撓の闘争の歴史を期待することはマチガイである。本書にはそんなことは一切書かれていない。否、そんな事実などはじめから存在していないのである。本書を読めばたちどころに気付くはずだ。首謀者などいない。弾圧など存在しない。我々がするべきことはそんな根も葉もない絵空事を糾問することではない。我々が追うべきは、放送禁止歌という名のバイアスをスケープゴートにほんとうの悲劇だけが忘れられていく、そういう現実なのだ。

この本に音楽史における資料的価値を期待するべきではない。この本の後半部分はまるごとそっくり部落差別のルポルタージュとなっているからだ。むしろ部落差別問題の話の妻として「竹田の子守唄」の挿話が加えられている、そんな主客の転倒が起こっているくらいだ。しかし、結果的に本書が帰結するのはやはり、「歌っているのは誰? 規制しているのは誰?」というめくるめく禅問答。
おそらく本書の発表以降広く伝播したせいであろうが、いわゆる「放送コード」なるものは存在していない、ということはよく知られている。正確に言うと、その規範となるものは存在するが、それには何ら強制力はない、ということである。規範をもとに自主規制するかどうかは個々の媒体の判断に委ねられる。だから、いわゆる放送禁止歌は絶対的な戒厳令ではなく、その懲戒はある程度の猶予を持つ。しかし、この規範すらもう何十年も規範として機能していない。査問する機関すらその存在を忘れている。弾圧などどこにもない、規制などどこにもない。しかし、ではなぜこの歌は抹殺されたのだ?規制し弾圧する首謀者などどこにもいないのに、なぜこの歌は忌避されつづけるのだ?そして、ほんとうの被害者はいったいどうなったのだ?
ノーム・チョムスキーを紐解くまでもなく、劣化した民主主義社会の暗愚を目の当たりとする。広域に高速で流通する情報の海、しかしその網羅の中で自ら手管を切り落とし機能不全になることを望もうとするかのような村社会への退化。それは世界の必然なのか?人の性なのか?本書はそれについて決定的な根本原理を指摘する。

「マスメディアは、実は規制を望んでいるのではないか?」と、民放連の村澤繁夫は、僕に言った。この地点から先は立ち入り禁止という表示は、逆にいえばこの地点からこっちは安全だよという指示と見なすことができる。規制されるということは、視点を変えれば道標を示してもらえることと同義なのだ。 (本文 「エピローグ」より)



誰もほんとうのことを言わない。誰も反駁しない。誰も何も言わない。誰もが懊悩や煩悶を避けようとする、誰もが無視しようとする、誰もが口をつぐむ、黙る。そして忘れられる。ほんとうに伝えるべきことは忘れられていく。かつて存在した被害者は忘れられ、悲劇は忘れられ、そうした無意識的な歴史修正の果てに潔癖症の現代社会だけが禍々しく残る。もう、誰もその言葉の原義など知らない。それが賎称語であったことすら定かでない。ただ歌だけが残る。魂を失い語り部としての勅命を忘れた歌だけが残る。それがいいことか悪いことかはわからない。でも、悲劇は繰り返される。

そのときぼくらはどれだけ自分を信じられるか。したり顔でうそぶくふざけた連中の戯言に追随するのではなく、弱者の叫びをただ鵜呑みにするのでもなく。自らの目で、自らの言葉で、どれだけその悲劇と向き合えるか、その悲劇を語れるか。

それが本書が人類に掲げた当面の課題である。
PR
Comment
name 
title 
color 
mail 
URL
comment 
pass    Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
コメントの修正にはpasswordが必要です。任意の英数字を入力して下さい。
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
08 2017/09 10
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
Twitter
junkie uses Twitter

最新コメント
[09/20 Sarah Carlson]
[09/15 nike kaishi size 5 5]
[08/27 Sarah Carlson]
[08/12 Ann Weaver]
[07/13 Ann Weaver]
最新トラックバック
(12/18)
バーコード
プロフィール
HN:
junkie
性別:
男性
自己紹介:
島根県のハードコアバンド、ヤンキー少女改め、SOFT、改め爽やかJ-POPデスメタルバンドPOSTOVOIのギター・ボーカルです。

バンドとは別にソロプロジェクトとして、チップチューン・デス・メタルを追求するF.O.D(Fuck or Die)をはじめました。MySpace

メールはこちら
ブログ内検索
カウンター
カウンター
最近のお気に入り
FLEETWOOD MAC "MR. WONDERFUL"


EARTH "EARTH 2 -SPECIAL LOW FREQUENCY VERSION-"


FLEETWOOD MAC "LIVE IN BOSTON REMASTERED VOLUME ONE"


FLEETWOOD MAC "LIVE IN BOSTON REMASTERED VOLUME TWO"


BLUE CHEER "VINCEBUS ERUPTUM"


MELVINS "LYSOL"


SIGH "GALLOWS GALLERY"



伊東美和 「ゾンビ映画大事典」



「悪魔のいけにえ」


「バッド・テイスト」


「愛のむきだし」


「マーターズ」
忍者アナライズ
Template by Crow's nest 忍者ブログ [PR]